
いまや誰もが当たり前に利用しているインターネット。だが、そんなインターネットの存在がもしかしたらその人の歴史や社会に、大きく関わっている可能性があるかもしれない…。この連載では、さまざまな方面で活躍する方のこれまでの歴史についてインタビューしながら「インターネット」との関わりについて紐解く。いま活躍するあの人は、いったいどんな軌跡を、インターネットとともに歩んできたのだろう?
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今回お話を伺うのは、Podcast『ラジオ知らねえ単語』のパーソナリティー、金井球さんと園凜さん。2023年に始まったこの番組は、Spotifyが選ぶ次世代のPodcastカルチャーを担う新進気鋭のクリエイター『RADAR: Podcasters 2025』に選出されるなど、人気を博している。
Podcastだけではなく、演技や文筆など、様々な領域で活躍されているおふたりが知り合ったきっかけは、インターネットだそう。インターネットとの出会い、SNSとの付き合い方の変化、今後やりたいことについて伺った。

見る専から、自分をSNSに出すまで
最初にインターネットに触れたのはいつですか?
金井:小学4年生の時に親からパソコンのお下がりをもらってアメーバピグ(※1)を始めたのが最初です。アメブロに嘘ばっかり書いてました。インターネットで人と交流するようになったのはこれが最初です。
嘘を書いていたというのは?
金井:暮らしている環境にあんまり納得いってなくて、本当はいないんですけど、お兄ちゃんや飼ってるチワワがいる設定でブログを書いていました。
他の人との交流も楽しかったんですけど、自分のアカウントを20個くらい持ってたんで、複数のブラウザでログインして、自分のアバター同士で会話もさせていました。
それはいつ頃の話ですか?
金井:小学5年生から中学1年生くらいまでどっぷりハマっていました。
園:言っちゃあれだけど、それにしてはちゃんとした大人になって良かったね(笑)。
金井:本当にそう(笑)。

そこからはどのようなサービスを利用していたのですか?
金井:ゆるくアメーバピグをやっていたんですけど、サービスが終了してしまって、そこからYouTubeやニコニコ動画を見ていました。ニコ動から神聖かまってちゃんや大森靖子さんを知って、サブカルに傾いた気がします。この時期にオモコロを知って、オモコロラジオを聞いたのがラジオの聞き始めです。凜ちゃんはどう?
園:小学4年生の頃にiPad miniを買ってもらって、ポケットコロニー(※2)というアバターを使って人と交流するアプリにハマってました。
金井:アメーバピグとあんまり変わらないね。頭身も同じ。
園:そうそう。その掲示板でレスバしてる人に憧れて、まずは「禿同」と送ってレスバしてる人の加勢をしていました。「激しく同意」っていう意味で。そしたら、「お前ら全員通報する」って送られてきて、それはアカウントが停止されるとかそれくらいの意味なんですけど、私は本当に家に警察が来ると思い込んじゃって(笑)。
金井:かわいい。
園:親に泣きついたら、「ネット上で人と交流するのは危ないから止めなさい」と言われてしまい、それでポケコロをやめ、インターネットでの繋がりは一旦無くなりました。中学生の時にたまたまオモコロを見つけて、それこそオモコロラジオを初めて聞いたのもこの時期です。
インターネットを利用者として楽しんでいたと思うんですけど、そこから自分で発信するきっかけはあったんですか?
園:私は高校生の頃からTwitterを使っていたんですけど、鍵垢で友達からいいねをもらうのが目的でした。「いいねが10ついたら熱い」みたいな感じでやっていて(笑)。
大学に入ってから、好きだった地下アイドルのファンと交流するためにオープンなアカウントを作りました。顔も徐々に載せるようになって、大学2年生の時には友達とアイドルをやって、地下ライブにずっと出ていました。金井ちゃんと知り合って仲良くなったのもこの時期です。
金井:私は高校生の時に、ミスiD(※3)という講談社がやってるオーディションを見るのが好きで、出ている人にTwitterからリプを送ったりしていました。その時期に、『ミスiDセミファイナリストの部屋』というイベントにお客さんとして行って、入口で迷っていたら、ミスiDに出てる人と勘違いされた事があったんです。その時に私も出ていいんだと気づきました。ミスiDに出ている人と友達になりたいと思って、応募者として投稿を始めました。
※1 用語:「アメーバピグ」とは2009年にリリースされた、サイバーエージェントが運営する仮想空間上のアバターコミュニティーサービス。自分にそっくりなアバター「ピグ」を作り、広場でチャットを行ったりすることができる。2019年にPC版・フィーチャーフォン版のサービスが終了した
※2 用語 :「ポケットコロニー」とは、ココネ株式会社が2011年にリリースしたキャラクター着せ替えアプリ。「ポケコロの星」に住んでいる「コロニアン」の着せ替えやお世話をしながら、自分だけの星をつくることができる。
※3 用語 :「ミスiD」とは、2012年から2021年まで講談社が主催したオーディションプロジェクトで、見た目やジャンル、ジェンダーロールに捉われず、新しい時代をサバイブする多様な女性のロールモデルを見つける事を目的としていた。金井球は「ミスiD2022」のグランプリを受賞している

あの頃のTwitterからの変化
TwitterもXへ名称が変わるなど、SNSの環境は変化していますが、今と昔でSNSとの付き合い方は変わっていますか?
金井:いやー、昔は良かったですよね(笑)。今はアプリに、課金をして利用時間の制限をかけています。そうしないと、1日が縦動画を見て終わっちゃう気がします。
園:Xを開くと、いつの間にか縦動画をスクロールしちゃう。
金井:私はTwitterが結構ずっと中心にあって、あの頃のTwitterが大好きでTwitterに代わるものなんてないのに、それがどんどん変わっていくから今はできなくなっています。
昔のTwitterの好きな所はなんでしたか?
金井:自分がフォローしてる人しかタイムラインに出なかった時が一番居心地よかったです。今は盛り上がらないと人に見られない仕様に変わっちゃって、興味がある事だけを見られる場所ではなくなった感じがあります。みんなで別のSNSに引っ越しできるものならしたいです。
園凜さんはSNSとの付き合い方は変わってきていますか?
園:SNSとの付き合い方については本当にずっと考えてます。ファンデーションを一気に出して顔に塗るような過激な動画を見てしまったときに、最初、「何でこんなもったいないことするんだよ」と思って。でも、その後にまんまと怒りを引き出されたんだと感じました。
今は、見る時間をスクリーンタイムで制限しています。Xは、おすすめ欄を見ると誰かが意地悪な事を言っているから、最近はXはフォロー欄の部分しか見ないようにしています。

SNSを見るだけでなく発信もされると思うんですけど、投稿する側としての変化は感じますか?
金井:今も昔も投稿したい事はあんまり変わってないです。ただ、バズったポストしか伸びていかない感じがしますね。フォロワーに向けてしか投稿してないのに、フォロワーにも届かない仕様になっている感覚があります。
園:言われてみればそうかも。
金井:最近は告知や仕事の情報を載せるような使い方にちょっとずつ変わっています。もっとパーソナルな事はnoteやPodcastで言えるから、情報を載せる為のSNSになりつつあります。
知らねえ単語のリスナーからの反応はチェックされてるんですか?
金井:めっちゃエゴサーチします(笑)。反応が返ってくるのがとても楽しくて、インターネットもそれが楽しみでやっている所があります。
園:ネット上の反応が少なくても、リアルでイベントを開催するとたくさん人が来てくれるから、その度にびっくりしちゃいます。でも、こないだ知らねえ単語を揶揄するポストが伸びてて、それは何でわざわざこんなことするの?とはすごい考えちゃいました。嫌な気持ちになったというよりは、いいねをつけたり発信している人の意図を考えちゃって。でも考えても仕方ないと思ってホットヨガを始めました。
金井:だけど行かなくなった(笑)。
園:最近はあんまり行ってないですけど(笑)。見ても仕方のない事だから、とにかく体を動かそうという気持ちになってます。
金井:私はあのツイートを見た時に、知らねえ単語が賛否あるコンテンツになったと感じて、ちょっとだけ嬉しかったんですよね。私個人にも知らねえ単語にも、今まで嫌な事を言ってくる人はいなくて、それは平和で最高と思っていたんですけど、固有名詞として名前を知られるようになった事はランクが上がったような感じがして嬉しかったです。嫌な気持ちにもなるので、複雑ではあるんですけど。

様々な変化はあると思うんですけど、インターネットをやっていて良かったことはありますか?
金井:インターネットは最高です。特にTwitterですけど、Twitterは人となりが出るので、そういう所で友達ができると長く続く感じがします。本当にインターネットで広がった関係の中で生活してますね。
園:インターネットがなかったら絶対に金井ちゃんと出会ってない。
金井:出会ってないし、Podcastもやってない。凜ちゃんとも、お互いにフォローしていて、私が定期的に凜ちゃんと会う理由を作りたいと思ってPodcastに誘ったんです。
園:金井ちゃんがいなかったら、金井ちゃんの繋がりや知らねえ単語として出会った人とも会えてないし、就職してたかもしれない。相当別の人生だったと思います。
金井:私は自分にコンプレックスがずっとあって、引っ込み思案で学生時代いじめを受けてたりもしてすごく暗かったんです。でも、ミスiDを受ける為にTwitterのアカウントを作って、ツイートしはじめたら反応が返ってきて、それがダイレクトに自分の自信に繋がって自己肯定感を上げてくれました。なので、Twitterをはじめて本当によかったと思います。アメーバピグも最高でした。
園:ポケコロも楽しかったんですけどね、通報されるまでは(笑)。でも、本当に高校でもオモコロがきっかけで仲良くなれたことがあったし、大学もつまらなくて嫌いだったので行くと泣いていたんですけど、Podcastやネットラジオをずっと聞いて救われてきました。だから、確実に私もインターネットに救われた側です。

いつまでもPodcastを続けたい
知らねえ単語は始まって2年間経ちますが、何か変化した事はありますか?
金井:ずっと楽しいですね。
園:ずっと楽しいです。知らねえ単語は仕事とは思っていなくて、本当に楽しいです。とにかく続けていきたい。
金井:おばあさんになっても続けてたら面白い(笑)。
季節ごとにビジュアル写真を撮ったり、ZINEを作っているのが特徴的だと思うのですが、これはどのような経緯で始まったんですか?
園:最初はサムネイルが固定されていたんですけど、これが変わったら面白いよねという話になり、写真を撮り始めました。
金井:写真が良いので何かにしないともったいないと思い、紙ものが好きだったので色々なものを作り始めました。やらなきゃいけないというよりかは、楽しいからやっているという感じですね。知らねえ単語でやりたくないことをやることはないです。
園:ないです。
最後に、今後の目標を教えてください。
金井:続ける事が第一ではあるんですけど、2人で映像に出たいですね。
園:知らねえ単語で映画とか出たいし、またMVも出たい(※4)です。知らねえ単語の外での活動が増えたらいいなと思います。
金井:知らねえ単語として紹介される事も嬉しいですが、「俳優の園凜さん、文章読んだことある金井さんがやってるPodcastが面白い」のようになるのが理想的です。外でたくさん仕事して、知らねえ単語はホームとして、戻って来る場所であって欲しいです。
園:めっちゃ禿同(笑)。
金井:Thank you!
※4 :2024年7月9日に公開された、クジラ夜の街「失恋喫茶」のミュージックビデオに知らねえ単語のおふたりが出演している。(https://youtu.be/ZyPiWhFdCpg)

<今回のインターネットポイント>
おふたりがインターネットに触れ始めた2010年代は、スマートフォンの普及とSNSの台頭によって、オンライン環境が一気に変化した時代でした。金井さんが楽しんでいたアメーバピグの終了は、長らくウェブ上の動画やゲームを支えてきたAdobe社が開発していたAdobe Flashのサポート終了が直接の理由でした。ブログ文化も、より短く、より速いコミュニケーションが求められる中で勢いを失い、TwitterなどのSNSが日常的な情報発信の中心へと成長していきます。そのTwitterも後にXへ名称を変え仕様が変化するなど、SNSを取り巻く環境は常に動き続けています。
一方で、視覚的な情報があふれ、動画コンテンツも急増した時代だからこそ、Podcastのような音声メディアが再度注目されつつあります。目を使わずに楽しめ、通学・通勤や家事の合間などにも寄り添える形式は、忙しく情報に追われがちな生活に自然と溶け込み、2010年代後半から利用者が増加しています。
こうした動きを見渡すと、2010年代のインターネットは、技術革新と生活様式の変化が密接に結びつきながら姿を変え続けてきたことがわかります。今回のインタビューで話題に上がったサービスやツールは、まさにその変化の只中で生まれ育ち、広がってきた存在と言えます。

プロフィール
左:園凜(その・りん)
俳優。映画やMV、モデルなど幅広い活動をしている。W主演を務める、映画『床一面こんな感じ』の公開を控える。
Instagram:https://www.instagram.com/sono_rin_
X:https://x.com/sono_rin_
右:金井球(かない・きゅう)
講談社主催のオーディションプロジェクト「ミスiD2022」グランプリ受賞。モデルや俳優、文筆家などマルチな活動を行う。noteに大連載「エッセイ松」を連載している。
Instagram:https://www.instagram.com/tiyk_tbr/
X:https://x.com/tiyk_tbr
取材・文:目黒智将
編集:conomi matsuura
写真:服部芽生
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