
いまや誰もが当たり前に利用しているインターネット。だが、そんなインターネットの存在がもしかしたらその人の歴史や社会に、大きく関わっている可能性があるかもしれない…。この連載では、さまざまな方面で活躍する方のこれまでの歴史についてインタビューしながら「インターネット」との関わりについて紐解く。いま活躍するあの人は、いったいどんな軌跡を、インターネットとともに歩んできたのだろう?
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SNSの総フォロワー数が650万人を超える4人組クリエイターユニット「午前0時のプリンセス」のメンバーであり、自身も中学生から動画クリエイターとして活動を続けてきたmomohahaさんにインタビュー。
ずっと素が出せなかったというmomohahaさんだが、「午前0時のプリンセス」での活動を通してありのままの自分を表現できるようになったという。
いまでは動画クリエイターを“天職”だと語るmomohahaさんに、これまでの道のりとメンバーへの思い、そしてキャリアをともに歩んだショート動画の可能性について聞いた。

気づかず投稿していたら、知らない間に有名人に
現在26歳のmomohahaさんが、初めてインターネットに触れたのはいつですか?
小学4年生で、初めてスマホを持ったときです。その頃、スマホを持っている子は本当に少なかったんですけど、2つ上の兄がスマホを買ってもらったのに便乗して私も買ってもらいました。
そのときはスマホをどう使っていましたか?
YouTubeを見たり、友達とドラマを作って撮ったりしていました。小学生のときはディズニープリンセスが好きで、自分のこともプリンセスだと思っていました(笑)。だからプリンセスのしぐさや、そのときはまっていたディズニーチャンネルのドラマの言い回しを真似て動画を撮っていました。
撮った動画は母親に「今日こういうの撮ったよ!」と見せたり、友達と見直して「このときの動画面白いね」と言いあったりしていましたね。
中学生になってからは6秒動画を投稿できるアプリサービスで発信を始めたそうですが、きっかけは何でしたか?
それが本当に偶然で。当時は無料で動画編集ができるアプリが限られていて、面白くて友達と変顔やなりきり動画を撮りあってたんです。でもアプリに投稿しないと動画が保存できないようになっていて、それに気づいたのがいろんな動画を保存したあとだったんですよね。知らない間にたくさんいいねがついていて、あれ?って。
気づかずに投稿して有名になっていたんですね!初めて身近な人以外に自分の動画を見られるのは、どんな気分でしたか?
いまみたいに「バズってる」という言葉を当時は知らなかったし、住んでいるのが都心じゃなかったので大勢から声をかけられる経験もなかったんです。でも、中学3年生で原宿に行ったときに、いろんな方が声をかけてくださって。こんなにたくさんの人に見られているんだと初めて気が付いて、嬉しさと同時に、下手なことはできないなと少し怖さも感じました。

フォロワーからのリクエストと配信でつながった「午前0時のプリンセス」
高校生からは事務所に所属し、YouTube等で活動されていたんですよね。2022年に聖秋流(せしる)さん、大内アイミさん、JESSICAさんとグループYouTube「午前0時のプリンセス」を結成されましたが、3人との出会いは何でしたか?
当時流行っていた、TikTokライブです。フォロワーさんからのリクエストで聖秋流、大内とそれぞれコラボ配信をしたのがきっかけで、3人でUSJに遊びに行くことになりました。ある日、大内のInstagramライブで私が「USJ楽しみだね」と何気なくコメントしたところ、JESSICAが「私も行きたい!」とコメントをくれたんです。
みんな初対面だったのですが、いざUSJで会うとすぐに打ち解けて、おなかがちぎれるほどこんなに笑ったのは初めてかも!と思うくらい楽しい一日でした。それからはよくみんなでZoomで話すようになって、夜から始めたのに気づいたら朝になっていることもありました。
ちょうどその頃、事務所からグループYouTubeを始めないかと提案があったんです。ダメ元で3人にLINEをしたら10分以内にみんなからやるって返事が来て、2回目に直接会うころにはもう結成していましたね。
すごいスピードですね!「午前0時のプリンセス」ではミックスルーツ(momohahaさん)、ジェンダーレス(聖秋流さん)、レズビアン(大内さん)、プラスサイズ(JESSICAさん)といった、メンバーそれぞれが持つマイノリティとしてのアイデンティティを積極的に発信していますよね。
もともとそういうコンセプトで集まったわけではなかったので、初めは特に意識していなかったんです。でもたまたま多様性のあるメンバーが集まったので、このメンバーだからこそ撮れる動画にしたいと思って発信するようになりました。
【LGBTQ・ハーフ・プラスサイズ】マイノリティーな個性を持つZ世代インフルエンサーのリアル
「午前0時のプリンセス」というメンバー名には、0時の鐘がなって魔法が解けても、ありのままの自分が一番輝けるという意味を込めました。自分のなかでは、メンバーそれぞれに個性があって、見た目も全く違って、一人一人が別の国から来たプリンセスのようなイメージがあったんです。しかも名前を略すと「ぜろぷり」になってかわいい!となって決まりました。

グループだからこそさらけ出せた素の自分
中学生からずっと個人で発信活動を続けてきたなかで、「午前0時のプリンセス」で初めてグループとして活動することに難しさはありましたか?
最初は、自分の素を出すのってすごく難しいなと悩んでいました。もともと事務所からグループ活動を提案されたのも、個人のチャンネルだといつも何かを演じていて私の素が全然見えなかったからなんです。
それでグループを組んだのですが、はじめは良く見られなきゃという思いがあって、ずっと借り物の自分を出しているような感覚でした。でも、優等生でいても視聴者の記憶に残らないことに気づいてきて。素で話しているほうが面白いし、ちゃんと自分のことを好きなファンがつくことも分かってきました。
それは、グループになって自分のポンコツな部分が隠せなくなってきたからというのもあります(笑)。それまでは謎に頭がいいやつだと思われたくて必死だったのですが、やっぱりポンコツなところは出ちゃう。でも、そういう部分がいいんだよとコメントをもらったときに、自分の個性はここなのかもしれないと思って吹っ切れました。

きっかけは視聴者のコメントだったんですね。momohahaさんが素の自分を出せるようになったことで、他のメンバーからの反応はどうでしたか?
「それでいいんだよ!ありのままが一番いいんだから、そのままで出た方がいいよ!」と言ってくれました。みんなに出会ってからは、YouTube以外の人前で見せる自分も、より素に近い自分が出しやすくなったのかなと思います。めっちゃポジティブになりました。うざいくらい!
以前の動画で、4人全員がメンバーのことを「家族」と表現していましたが、それはいまでも変わらないですか?
変わらないですね。別の方とコラボするときに特に思うのですが、自分が不安なときに横にメンバーがいるのを見ると安心するんです。イベントのときもめっちゃ緊張しますが、みんなが「大丈夫やで!」とポンポン背中を押してくれたりすると、たしかに1人じゃないもんなと思えます。
この間も、撮影の合間にJESSICAがなにか見ながら笑ってたんです。なに見てるんだろう?って思っていたら私の個人チャンネルを見てくれていて。こんなに笑ってくれるメンバーがいるんだと思ったら、すごく嬉しかったです。なにかあったとしても、絶対にそばにいてくれる存在という意味では、本当に家族だなと思います。

ショート動画はファンを作る入口になる
momohahaさんはショート動画投稿アプリから動画クリエイターとしてのキャリアを始めたこともあり、ショート動画の投稿に力を入れているイメージがあります。そんなmomohahaさんから見たショート動画の特徴は何だと思いますか?
ショート動画は、まずは気軽に見てもらえるのが大きいですよね。長尺だと知らない人の動画はあまり開かないと思うのですが、ショート動画だと簡単にサクサク見ちゃうし、インパクトに残ったものはすごく覚えていて、スマホもおすすめに表示するようになる。それでどんどんハマっていくので、ショート動画は人を短期間でとりこにしてファンにする入口を作るものだと思っています。
ショート動画を作るなかで工夫していることはありますか?
動画アプリを開いたときの最初の印象に気を付けています。一番最初に見たものでそのあと見るか見ないかが決まるので、え!なにこれ?と思うインパクトのあるものを最初に持ってくるようにしています。
他には、特にYouTube ショートではタイトルを意識します。例えば「今日こんな最悪な出来事があった」というタイトルよりは「最悪な出来事が起こったこいつがヤバすぎる」みたいな、自分のことなのに第三者が言っているような表現にすると視聴数が伸びるんです。

やりたいことは、小さいころから変わっていない
中学生からいままで、ずっと動画クリエイターとして発信を続けるというのは本当に難しいことだと思います。その原動力は、どこにあるのでしょうか?
趣味が昔から変わっていないだけなんですよね。小学1年生のころから、親のビデオカメラを勝手に借りて動画を撮ってたんです。最初は人形を使ってドラマを作っていて、それがいまは人形じゃなくて自分が演じているような感覚です。
私、人から面白いと言われるのが本当に大好物なんです。だから自分が作ったものを見てくれて、さらに褒めてもらえる動画クリエイターは本当に天職だと思っていて。続けてこれたというよりは、続けたいという気持ちが大きいかな。
天職だと思えるのは最高ですね!最後に、今後はクリエイターとしてどう活動を続けていきたいですか?
もともと演じるのがすごく好きで、最近はショートドラマに出演する機会が増えて楽しさを感じているところなので、そういったお仕事はもっとしていきたいです。
あとは、メイクやファッションも好きなのですが「午前0時のプリンセス」に入るまでは発信できるほど自信がなくて。でも、メンバーがポジティブ人間の集まりで「もっと出していった方がいいよ!それがあなたの魅力だから」と背中を押してもらったことで自信が出て、いまではメンバー全員で雑誌の表紙を飾る夢ができました。
あとはバラエティー番組やブランドのモデルにも興味があって…って、願望がありすぎます!やりたいことも、まだできていないこともたくさんあるので、夢に突っ走れるように自分にできることをコツコツやっていきたいと思います。

<今回のインターネットポイント>
インターネットの発展は、ショート動画文化の形成と拡大を大きく後押ししました。高速通信とスマートフォンの普及によって、誰もが動画を撮影・編集・投稿できるようになり、映像は一部の制作者だけのものから、一般の人々の日常的な表現手段へと変化しました。
その流れを生んだのが、まず2005年に登場したYouTubeです。誰でも無料で動画を公開・共有できる仕組みは、映像表現のハードルを劇的に下げ、ネット上で「見る」「つくる」「広める」文化を生み出しました。その後、2013年に登場したVineが6秒という短い制限の中で「短くても伝わる表現」を確立し、ショート動画という新たな形式を提示しました。この流れは、のちのTikTokやYouTube ショートへと受け継がれていきます。
いまではショート動画は、個人の表現の場であると同時に、音楽・ファッション・観光など多様なトレンドを生み出す文化の発信基地になっています。

momohaha(ももはは)
1999年生まれ。アフリカ系アメリカ人の父と日本人の母を持つ。中学生のときに6秒動画投稿アプリで動画の投稿を始め、YouTubeやTikTokでも活躍。2021年に公開した“マスク詐欺”動画が大きな反響を呼ぶ。2022年にミックス、ジェンダーレス、プラスサイズなど多様な個性を持つ4人組クリエイターユニット「午前0時のプリンセス」を結成。SNS活動のほか、ブランド展開やTokyo Pride公式アンバサダーの就任など活躍の場を広げている。
YouTube:https://youtube.com/@momohaha1198
Instagram:https://www.instagram.com/momo8haha
X:https://x.com/momo8kuro
TikTok:https://www.tiktok.com/@momohahachannel
取材・文:卜部奏音
編集:conomi matsuura
写真:服部芽生
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