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わたしの歴史と、インターネット|クリエイター・そーちゃんと語る、ポジティブなインターネット術

いまや誰もが当たり前に利用しているインターネット。だが、そんなインターネットの存在がもしかしたらその人の歴史や社会に、大きく関わっている可能性があるかもしれない…。この連載では、さまざまな方面で活躍する方のこれまでの歴史についてインタビューしながら「インターネット」との関わりについて紐解く。いま活躍するあの人は、いったいどんな軌跡を、インターネットとともに歩んできたのだろう?

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今回は、クリエイター・そーちゃんさんにインタビュー。

98年生まれ、初めて買った携帯電話がスマートフォンというデジタルネイティブ世代のそーちゃんさん。海外でプロサッカー選手として活躍していた経験を持つが、どのようにしてインターネットを中心に活動するクリエイターになっていったのか。そーちゃんさんとインターネットの歴史を振り返る。

インターネットとの出会いはiPhone 4s

まずは、初めてインターネットに触れたときのことを教えてください。

中学1年生の時に、iPhone 4sを買ってもらってからですね。当時のiPhoneっていまよりずっと小さかったし、ホームボタンに、四角のマークも付いてたような記憶があります。その頃はサッカーのクラブチームに入っていたので、家族との連絡手段も兼ねて持たせてもらってました。だから、携帯を持ち出したのは同級生のなかでも早い方でしたね。

よく使っていたアプリがあれば教えてください。

一番よく使っていたのはYouTubeですね。当時は、ドリブルしながら登校するくらいサッカーひと筋だったので、海外選手のプレー集ばかり見ていました。特にロナウジーニョのプレーが大好きで。逆に言うと、サッカー関連の動画以外はほとんど見た記憶がないんですよね。

SNSではアメーバピグ(※1)を使っていました。アバターを作ったり、ネット上で見知らぬ誰かとつながったりと、あれが最初のインターネットを使った遊びだったと思います。

あとは、オンラインゲームのチョコットランド(※2)にすごくハマっていて、課金も結構していた気がします…(笑)。

いまはInstagramをメインで使われていますが、いつごろ始めたのでしょうか。

アカウント自体は高校生の頃に作ったのですが、周りがTwitterをメインで使っていたこともあり、当時はほとんど動かしてなくて。Instagramをメインで使い出したのは、高校を卒業して海外に行ってからでした。

友達になってSNSを交換する際、海外ではInstagramが主流だったので、自然にTwitterからInstagramにシフトしていきましたね。

※1 用語:2009年に開始されたアバターコミュニティーサービス。自分に似せたアバターを作成し、オンライン上でアバター同士がチャットやゲームを通じて交流する。
※2 用語:2007年にハンゲームが提供開始したオンラインRPG。可愛いキャラを操作し、仲間と協力しながら冒険やバトルを楽しめる。

「綺麗で、かっこよくって、美しくなりたい!」

そーちゃんさんといえばTikTokのイメージが強いですが、いつから始めたんでしょうか。

海外にいたときに始めたので、最初の方に投稿してたのは「こうすればサッカーが上手くなる!」みたいな、レクチャー系のハウツー動画でしたね。ちなみに、そのころの動画はいまでも遡ってもらえれば視聴可能です。

いまではメイク系の動画が中心ですが、メイクを好きになったきっかけを教えてください。

それがいつからかは覚えていなくて、物心ついたときからずっと好きなんです。というのも、2~3歳の頃から日本舞踊を習っていて、舞台に上がるときは真っ白なお化粧をしていたんですよね。中学生までは日本舞踊とサッカーを並行して続けていたんですが、高校では寮生活だったため、日本舞踊を続けることができなくなってしまいました。

ただ、いまはまた再開していて、4月には地元・北海道で公演があるので、いまはその準備を進めているところです!

普段、日常でするメイクにも小さい頃から興味があったんでしょうか?

昔からありましたね。美容にはずっと興味があったので、スキンケアは小さい頃からやってました。ただ、それ以外のメイクは、サッカーをやってた頃はできなかったんですよね。

サッカーを引退した後に、自分自身について色々考えたんですけど、「綺麗で、かっこよくって、美しくなりたい!」という気持ちがあることに気付きました。全力で取り組んでいたサッカーにも区切りがついたし、自分が好きで新しいことにもチャレンジするいい機会だなと思い、メイクに挑戦することにしたんです。

メンズメイクの初手に何がオススメ?

メイクに興味を持つ男性も増えている印象ですが、「何からやればいいのかわからない人」が多いのではないかなと思っています。

最初は自分でメイク道具を買って試しにメイクをすると思うんです。そうすると最初は、100%ケバくなります。ケバくて、雑くて、荒い。

僕がメイクを始めた頃は男性向けのメイク動画がほとんどなかったので、女性向けの「初心者メイク」や「ナチュラルメイク」動画を見ながら勉強しました。とにかく自分で調べて、試行錯誤の繰り返し。自分に似合うメイクに辿り着くまで大変でしたが、上達していくのがすごく楽しかったですね。

男性がメイクを始める場合、1歩目には何がオススメですか?

アイシャドウとかはいらなくて、まずはお肌をフラットに綺麗に見せるだけで、印象が大きく変わると思います。特にオススメなのが「日焼け止めBBクリーム」。日焼け止めとBBクリームが一体になっているので、普段スキンケアをしてない人でも、これを塗るだけで見違えるはずです。ただし、塗りすぎには注意です。内側から外側に向かってグラデーションをつけるようになじませると、自然な仕上がりになりますよ。

もう1つおすすめなのが、チーク。「ほんのり酔ってるかな?」ぐらいのすごく薄いピンク色をのせるだけで、顔の印象がぐっと変わります。血色がよく見えて、ナチュラルな肌感になるんです。「さりげなくチークを!」これは、全国のメイク初心者男性にぜひ伝えたいポイントですね。

それから、男性には黒やグレー系のネイルも意外と似合いやすいですよ。

同性の友達でもネイルしている人がいますけど、男性同士だと褒め合うのが少し照れ臭くて…そーちゃんさんがよく使う「褒め言葉」があれば知りたいです。

そういうときにオススメなのが、魔法の言葉「イケてるね」です。男性は照れ屋な人が多いのか、身の回りを見ても、あまり褒め合う文化が根付いていない気がします。でも、だからこそ「イケてるね」と一言かけるだけで、すごくいい雰囲気になるんですよね。

僕自身も意識して使うようにしていて、多いときは1日に何回も言ってる気がします(笑)。「イケてるね」って言われると、自然と笑顔が増えて、それがポジティブな気持ちにも繋がるんです。「今日の自分、イケてるんだ!」と思えるだけで、特別なことがなくても気分よく過ごせる。そんな小さな一言が、毎日をちょっと楽しくしてくれるんですよね。

インターネットで幸せを分かち合いたい

メイク系の動画を中心に発信されるようになったことに、きっかけはありましたか?

メイクが好きというのが1番の理由ですね。あとは、海外での経験が大きく影響していると思います。日本では、自分の素顔やありのままの姿をSNSに投稿することに抵抗を感じる人が多いですよね。でも、海外ではそんなのまったく気にせず、みんなが自由に自分を表現している。投稿の主役は“自分”で、一人ひとりの個性がSNSにしっかり出ているんです。

そのカルチャーショックが、自分の価値観を変えました。「日本でも、もっと自分を自由に表現できるようになったらいいのに」と思うようになったし、そこから「すっぴんも寝顔も、どんな顔でも“これが自分!”」と考えるようになったんです。だから今では、起きて5分で動画を回すこともあります(笑)。

@sohei.japan 寝坊して準備する時は工程もバラバラ😂何して良いか分からなくなって目的もなく周りを見渡す🤣#GRWM #メイク #美容男子 #コスメ #コスメ紹介 #モーニングルーティン #結婚式 ♬ 運動会定番曲 クシコスポスト - Yuumi Iida

動画を発信する際に、心がけていることがあれば教えてください。

見てくれている人が元気を受け取り、少しでも自信を得られるような投稿をすることですかね。

メイク系の動画以外にも、自分のセクシュアリティに関する話やLGBTQ+についての説明動画も投稿しています。実は、自分自身もそういった動画からすごく元気や勇気をもらった経験があるんです。当時は今ほどLGBTQ+に対する社会的な理解が進んでいなかったので、なおさらそういう発信に救われました。

だからこそ、自分も誰かにとっての“支え”になれたらと思っています。動画を見た人が「ありのままの自分を隠す必要なんてない」と感じてくれたり、少しでも前向きな気持ちになってくれたら嬉しいですね。そんな想いを込めて、発信を続けています。

最近、SNSではネガティブな話も多くなってますが、そこに関してどのようにお考えでしょうか。

SNSもそうだし、インターネット自体にネガティブなイメージを持つ人も多いと思うんですよ。でも、インターネットは使い方次第で、元気や幸せを分かち合える素晴らしいプラットフォームにもなると思っています。だからこそ、ポジティブな側面に目を向けて、前向きに活用していきたいですね。

そのためにも、まずは自分自身が明るい発信をすることを心がけています。使い方や見方を少し変えるだけで、傷つく人が減って、より優しいインターネットの世界になればいいなと。

TikTokやYouTubeのコメント欄には、ほんの少しですが否定的なコメントがつくこともあります。おそらく「メイクをする男性」が珍しいと感じる人がいるからかもしれません。でも、そういったコメントも基本的にはブロックせずに、そのままにしておくようにしています。

アンチコメントをブロックしないのはなぜなのでしょうか。

もちろん、ブロックした方が見た目としてはスッキリするんですけど、あえて明るくリプライすることで、そのコメントをした人が変わるきっかけになるかもしれないし、「そーちゃんみたいな人もいるんだ」と知るきっかけにもなるんじゃないかなと思うんです。

最初は否定的な気持ちでコメントしたとしても、自分の発信を通じて、少しずつでもポジティブな方向に変わっていってくれたら嬉しいですね。それもまた、発信者としての大切な責務のひとつだと思うので、これからも続けていきたいです。

最後に、この先挑戦していきたいことがあれば教えてください。

いまはSNSをメインに活動してるんですけど、これからは他のメディアにも露出していけるようになっていきたいなって思っています。見てくれた人たちの1人でも多くの人をハッピーにしていきたいですね!

あと、全然関係ないですが、昨日ネイルを変えました。
(ネイルを見せてくれるそーちゃんさん)

そーちゃんさん、イケてますね!!

<今回のインターネット・ポイント>

動画を投稿できるSNSサービス・TikTokが日本で登場したのは、2017年。そーちゃんさんがインターネットと初めて出会った「iPhone」ですが、2017年は「iPhone 8」が発売された年です。スマートフォンが普及し、誰でも気軽に縦型の動画撮影することができたことも、TikTokが流行した一因と言えるかもしれません。

TikTokは10代から20代を中心に利用されており、音楽に合わせて歌ったり踊ったりなど、初心者でも手軽に動画を投稿できる点が特徴です。

そのなかでも人気の投稿形式のひとつが「GRWM」。GRWMとは「Get Ready With Me」の略で、「わたしと一緒に準備しましょう」という意味です。TikTokなどのSNSで人気の動画投稿形式のひとつで、視聴者に「一緒に準備をしている感覚」を共有し、憧れの人物の日常生活を知ることができる魅力があります。

そーちゃん
TikTokを中心に活動するクリエイター。スキンケア、メイク、ファッション関連の投稿を行っており、幅広い層の男女から人気を集めている。動画では、ポジティブで明るい性格が全面に出た商品紹介が特徴的。PPP STUDIO所属。
Instagram:@sohei.japan
TikTok:@sohei.japan 

取材・文:吉岡葵
編集:安井一輝
写真:服部芽生

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