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YouTuber・小説家のぶんけい/柿原朋哉を知るための10のポイント【止まった時代を動かす、若き才能 B面】

2019年末から世界を侵食し、今なお我々を蝕むコロナ禍。失われた多くの命や、止まってしまった経済活動や、浮き彫りになった価値観の衝突など、暗いニュースが多い現在。しかし、そんな閉塞的な空気の漂う今でも、むしろ今だからこそ、さらに自身のクリエイティビティを輝かせ、未来をつくっていく素敵な才能を持つ若者たちが存在する。

既成概念にとらわれない多様な暮らし・人生を応援する「LIFULL STORIES」と、社会を前進させるヒトやコトをピックアップする「あしたメディア by BIGLOBE」は、そんな才能の持ち主に着目し、彼ら/彼女らの意志や行動から、この時代を生き抜く勇気とヒントを見つけるインタビュー連載共同企画「止まった時代を動かす、若き才能」を実施。

A面では、その才能を支える過去や活動への思いを、B面では、表舞台での活躍の裏側にある日々の生活や、その個性を理解するための10のポイントを質問した。

A面はこちらから

2022年8月に『匿名』(講談社)で小説家デビューした柿原朋哉さん。「ぶんけい」名義では、登録者140万人を超え、人気を誇る「パオパオチャンネル」を作るなど、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターだ。1問1答で紐解く「ぶんけい/柿原朋哉を知るための10のポイント」。

YouTuber・小説家のぶんけい/柿原朋哉を知るための10のポイント

1. バイブルは湊かなえ『告白』

中学生のときに湊かなえさんの『告白』を読んで、その後に映画の『告白』を観ました。それが、物語を好きになったきっかけです。もう“好き”を通り越して、バイブルですね。読んでいると、おもしろくないページがない。それに読んでいておもしろいだけでなく、思いを馳せたくなるようなテーマがあり、人文学的な深さもある。それが“どエンタメ”の中で展開されているのがすごいなと思います。

2. 犬の散歩でインスピレーションを得る

犬の散歩をしている時間が好きです。無心になれる自分の時間ですね。そのとき、体験していることが無意識に作品へとアウトプットされているかもしれません。例えば、自転車が歩道を走ってきて後ろからベルを鳴らされるのが僕はめっちゃ嫌いなんですよ。そうやって、フラストレーションを蓄積することも大事だなと思うし、「なんで自分はそんなに嫌なんだろう」と考えたら、「歩道を正しく歩いている正直者がバカを見るということが嫌なんだな」とたどり着く。「小説に書くことを探そう」と歩いているわけではないですが、小説を書くときになると現れてきているかもしれません。

3. 友人から「みんなは柿原朋哉に騙されている」と言われます

性格は、わがまま、利己的、自分が大事。そういう面を持っていながら、仲の良い友達より外では笑顔で挨拶をして、八方美人とも言われます。もちろん他の人をないがしろにしているわけではなくて、優しさは忘れずにいたいですけどね。ドライな面を知っている友人からは、「みんなは柿原朋哉に騙されている」と言われます(笑)。作家として生きていくには、これぐらいの方がいいかもしれないし、ちょっと悩ましいですね。

4. マネージャーから受けた愛

YouTuberのマネジメント事務所・UUUMに以前は所属していました。UUUMのマネージャーは独自に「バディ」と呼ぶのですが、バディさんたちはみんな尊敬しています。何よりもクリエイターを優先してくれました。商品としてというよりも、本当に人間として大事にしてくれて、愛してくれている感じがあって。僕自身は、そこまで人を愛することはできていないかもしれないので、尊敬するし、学びたいことがいっぱいありました。

5. おもしろくて毒気のある映像作家たち

『告白』は原作も好きですが、映画の中島哲也監督も憧れの存在です。高校生になってからは、宮藤官九郎さん、松尾スズキさん、小林賢太郎さんといった方々に興味が湧いてきましたね。好きな映像作家さんの幅は広くて好きな理由もそれぞれ違いますが、共通点を挙げるなら、おもしろいけれど毒気や風刺もあるところですかね。

6. 1か月休みが取れたら、韓国語を勉強したい

もし1か月休みが取れるとしたら、韓国語を勉強したいです。今、人生初の推しがいるんです。それがK-POPグループのTO1で、特に小林大悟くん。日本人の子なので「韓国語を勉強したい」と言うのも不思議な感じですけど、グループ9人のうち7人が韓国人なので、グループのメンバーとも一緒に喋ってみたいんですよね。

7. この3人と出会えていなければ今の自分はない

大学時代の友達で、今でも一緒に会社をやっているのが、オカダくんと井上くん。彼らがいなければ、会社を作らず就職していただろうし、今の自分はなかったです。それから、パオパオチャンネルの相方の@小豆との出会いがなかったら、本当にどうなっていたんでしょうね……。他にもたくさんの大切な出会いがありましたけど、大きな転換点となったその3人との出会いがなければ、今の自分はないと思います。

8. 疲れた時にリフレッシュさせてくれるのは「時間」

疲れた時、大量の時間がないと僕は回復できないです。逆に言うと、時間さえあれば回復できる。よく「時間が解決してくれるよ」と受動的に言ったりしますけど、僕は能動的に時間を作って「どうやって回復させよう」と考えるタイプです。ある意味ではネガティブでもあるけれど、僕はポジティブに捉えていますね。

9. 託されている

父から「自分の人生だから好きに生きたらいい」と言ってもらったのはありがたかったです。父と母は、高校を卒業したら就職するのが当たり前だった時代に、地元の淡路島で生まれ育ちました。島から出て行くことはなく、就職して結婚して家族を持った。だからきっと本当は、やりたかったこと、それが当たり前じゃない環境なら選んでいた野望、野望すら芽生えなかった自分……いろいろ思うところがあるかもしれません。一方の僕は、大学に行く、就職じゃなくて会社を作る、YouTubeを始める、と新しいことをする人生。それに対して「自分の人生だから好きに生きたらいい」と言われて、「自分にはできなかったからそれを応援するよ」と託されているような気持ちになります。だから、両親に良い姿を、意地でも見せたいですね。

10. 地球に僕1人しかいなかったら、作らない

僕は映像や小説を作るだけでは楽しくないんです。作って、人に見てもらうことが楽しいんだと思います。作品を見せて、感想や評判、反響をもらったりすることが楽しい。考えてみると、それは作品を通していなくてもよくて、双方向にコミュニケーションを取ること自体が好きなんだと思います。人と喋ることも好きで、友達とゲームをするよりも「これについてどう思うか」とずっと話し合ったりしているので、作品を作るのも僕の中ではそれに近いのかもしれないですね。例えば、アトリエにこもって長く絵を描き続けることを楽しめるタイプではないですし、もしも地球に僕1人しかいなかったら作らないです。

 

柿原さんは温和で、丁寧に言葉を扱い、周囲への配慮を欠かさない。動画を視聴したことのある人なら、そんなイメージに共感できるだろう。しかし、「ドライ」「わがまま」と自身が語るように、芯の強さもところどころに垣間見せる。「ぶんけい」では書けなかったようなことを柿原朋哉として書き始めている彼は、新たな地平の見える場所へ足を踏み入れている。

ジャケット ¥49,800/room.13(Sian PR/03-6662-5525)
オーバーオール ¥39,900/masterkey(TEENY RANCH/03-6812-9341)
スタイリング:藤本大輔(tas)
ヘアメイク:入江美雪希

 

ぶんけい/柿原朋哉(かきはら ともや)
1994年生まれ。作家、動画クリエイター、などマルチに活躍するクリエイター。2022年4月まで動画を投稿していた「パオパオチャンネル」は、登録者140万人を超え、圧倒的な人気を誇った。2022年8月に『匿名』(講談社)で小説家デビュー。
Twitter @bunkei_tk @kakihara_tomoya


文:遠藤 光太
編集:宮川 岳大
写真:内海 裕之

 

柿原さんのA面記事はこちら:『匿名』で小説家デビュー。YouTuber・小説家のぶんけい/柿原朋哉