よりよい未来の話をしよう

コンビニから、自分ごとにするSDGs

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夕飯を買いに来たコンビニで、「てまえどり」のPOPが付けられていた。私たちが商品棚の手前にある消費期限が近いものを選ぶことで、消費期限切れで廃棄することによる食品ロスを削減しようという取り組みだ。普段から、コンビニで買い物をするときは何も気にせず手前から取っていたが、実はこのアクションが食品ロス削減に貢献しているらしい。

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筆者撮影

食品ロスの削減を含む“SDGs”はどこかで誰かが頑張っている、ものすごく大きなことだと感じていた。地球のサステナビリティが大切なことは分かっているが、明日もちゃんと自分が生きていくために、洗濯したり、ご飯を食べたり、時には落ち込んだ自分を慰めたりと、目の前の生活にいっぱいいっぱいになってしまっている。

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筆者撮影

しかし、おにぎりやサラダを買うときに当たり前のようにした「てまえどり」は遠い存在だと思っていたSDGsにつながる小さな1歩だったのである。誰にだって、簡単にできるSDGsがあるのだ。私たちの生活に身近なコンビニから始められるSDGsを調べてみることにした。

食品ロスを減らす「てまえどり」

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消費者庁、農林水産省、環境省による「てまえどり」を促すポスター

気づきのきっかけになった「てまえどり」は商品棚の手前にある商品=消費期限の迫った商品を積極的に選ぶことだ。そもそもの背景として、コンビニは私たちがいつ来店しても商品が並んでいる状況をつくるために商品を多めに仕入れておくのが一般的であり、そのために消費期限切れ廃棄が多く発生してしまうことが問題となっていた。私たち消費者は、わざわざ消費期限の長いものを後ろから選ばずに、手前から取ることでその廃棄を減らすことができる。なんとなく消費期限の長いものを買うと得した気持ちになるが、その考えから抜け出し、ロスの削減に貢献したいものだ。

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そして、この食品ロス削減は、SDGsの「つくる責任 つかう責任」の達成につながっている。「つくる責任 つかう責任」とは、大量生産・大量廃棄から脱却し、限られた資源を有効に活用していくための目標だ。てまえどりは消費者のつかう責任であるが、コンビニ側が行っているSDGs実現に向けた工夫とはどういったものがあるだろうか。

コンビニ側の工夫の数々

1:チルドのお弁当を増やす

コンビニ側も食品ロスを減らすために工夫している。消費期限の短い常温のお弁当の売り場が小さくなり、代わりに消費期限の長いチルドのお弁当が増えてきているのだ。セブンイレブンでは、弁当におけるチルド弁当の構成比が2010年は11.9%だったのに対し、2018年上期には40.2%になっている。(※1)ランチに食べて、午後からも頑張る活力をくれる、味しみしみのチルドかつ丼やパスタは、私たちの暮らしに彩りを与えるだけでなく、食品の廃棄を減らすSDGsの立役者でもあったのだ。

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筆者撮影

2:大豆ミート食品の増加

食品ロス以外のSDGsへのつながりを探してみると、大豆ミートがいくつかの商品に使われていることに気がつく。カレー、坦々麺、ハンバーガー、タコス、どれもガッツリ食べられそうなイメージだが、実はこれらメニューはすべて大豆ミートを使用した商品としてコンビニで販売されたことがある。筆者もコンビニの大豆ミートのタコスミートをよく購入するが、しっかり味もかみごたえもあって、食肉と遜色もなく、とてもおいしい。料理法が難しそうに思える大豆ミートは、コンビニで味付けされたものからお手軽に生活に取り入れてみるのが良いかもしれない。

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筆者撮影

また、大豆ミートは畜産による温室効果ガス排出や、大量の水使用による環境負荷を減らす役割が期待される。

一方で大豆産業そのものには課題が残る。大豆の大量生産、大量消費を支えるために、大豆畑が拡張され、世界の森林が伐採されているのだ。
大豆の大量生産が進む理由は、代替食品としての大豆ミートの需要拡大だけでなく、家畜の餌としても大量に使用されているからである。大豆ミートだから環境に良いというわけではなく、肉を食べることが悪いというわけでもなく、どういった手段で栽培された大豆なのかを気にしていく態度が企業にも私たち消費者にも必要とされそうだ。

※1 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 2019年2月期 第2四半期決算説明会
Microsoft PowerPoint - 2018.2Q決算プレゼン⑦(確定版) .pptx (7andi.com)

従業員の63.8%が人手不足を実感、コンビニの労働問題

コンビニが実現しているSDGsへの取り組みを探ってきたが、これから改善すべき課題点ももちろんある。その1つが労働問題だ。経済産業省のアンケートにおいて、コンビニ運営の課題として、従業員の63.8%が「人手不足」を回答している。(※2)主にその人手不足の穴を埋めるのはコンビニオーナーであり、その85%が週休1日以下だ。(※3)家の近くのコンビニで、夜によくレジをしてくれるおじいさんも、もしかしたら人手不足の穴を埋めているオーナーなのかもしれない。

人手不足を解消するために、セルフレジやスマホ決済が導入されてきたが、根本的な問題として24時間営業がある。私たちは当たり前のように、コンビニが24時間開いていると思っているが、その裏には誰かの深夜労働が発生しているのだ。非24時間営業にする店舗も出てきてはいるが(※4)、コンビニオーナーの希望だけでなく、各本社との協議がある場合が多いため、すんなり進まない。

SDGsには「働きがいも 経済成長も」というゴールがあり、性別や人種の垣根なく、すべての人が人間らしい環境で働きがいのある仕事をできるようにすることを目指している。SDGsの観点からしても、コンビニの長時間労働や望まない深夜労働は解決されるべき課題だ。

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※2参照:経済産業省「第3回 新たなコンビニのあり方検討会 調査報告資料(オーナーアンケート)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/new_cvs/pdf/003_02_01.pdf
※3 参考:日本経済新聞 コンビニ大手3社、時短2000店超え 売上高は初の減収: 日本経済新聞 (nikkei.com)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC166VP0W1A810C2000000/

※4 参考:日本経済新聞 コンビニ大手3社、時短2000店超え 売上高は初の減収: 日本経済新聞 (nikkei.com)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC166VP0W1A810C2000000/

SDGsを進める地球の一員になるために

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つい先日までSDGsが遠いものに感じていた筆者であったが、コンビニの「てまえどり」を知ったことをきっかけに、知っているようでよく知らなかった大豆ミートの存在意義や、コンビニが抱える大きな労働問題まで気にするようになった。日頃からてまえどりをする自分を褒めてあげることは、SDGsを意識的に日常に取り入れる良い第1歩になったが、それだけでなく課題がないのかしっかり調べたり、他のスーパーやレストランではどうなっているのか見てみたりすると、コンビニから始まった私とSDGsとのつながりはもっと深いものになっていくのだろう。

きっとそうやってSDGsと関わる道中には、現代社会の上手くいってなさに絶望したり、遠くの誰かを助けられない歯痒さに苦しんで、SDGsなんて気にせず生きていきたくなるときが訪れると思う。そんなときは無理せず一度、立ち止まって、またコンビニでてまえどりをする小さな関わりから始めたい。


文:望月愛海
編集:おのれい