よりよい未来の話をしよう

アクションから始めよう。みんなで始める環境アクションA to Z

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ノーベル物理学賞に選ばれた真鍋淑郎さんや、日本を含めた全世界で行われている草の根運動「Fridays For Future」の発起人でもあるスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん。今や「気候変動」はSDGsと並んで誰もが知る単語になりつつある。
今、地球が危機的状況というのはなんとなく感じ始めている。しかし実際、私たちにはどのような対策や活動ができるのだろう?今回は深刻化していく気候変動に私たちが取れる対策・行動についてまとめていく。

気候変動の予習・復習

「気候」とは、ある土地や地域の大気の状態のことを指す。 気温や湿度、降水量などが気候の構成要素となる。これら構成要素に変化が起こることを総じて気候変動と呼ぶ。そして、この気候変動には大きく分けて2つのものがあるとされている。1つは自然による気候変動、もう1つは人為的要因による気候変動である。一般に問題とされているのは後者の人為的要因による気候変動であり、気象庁の気候変動に関するページでは次のように説明されている。

人為的な要因には人間活動に伴う二酸化炭素などの温室効果気体の増加やエーロゾルの増加、森林破壊などがある。二酸化炭素などの温室効果気体の増加は、地上気温を上昇させ、森林破壊などの植生の変化は水の循環や地球表面の日射の反射量に影響を及ぼす。
 近年は大量の石油や石炭などの化石燃料の消費による大気中の二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化に対する懸念が強まり、人為的な要因による気候変動に対する関心が強まっている。

(※1)

確かに、日本でも九州や関西、中部での豪雨災害は記憶に新しく、最近でも日毎の寒暖差も少し不安定だったように感じる。これらも気候変動との結びつきが強そうである。日本だけでなく海外でもこうした影響は顕著だ。例えばカナダでは2021年6月、普段なら25℃程度の地域で49.6℃を記録しカナダの観測史上最高値となった。

加えて、「国連環境計画(UNEP)排出ギャップレポート2019」によれば、2021年から2025年までの取り組みでパリ協定で定められた1.5℃目標が達成できるかどうかが決まってしまうことが分かる。1.5度目標の達成には2030年には2010年比で温室効果ガス排出を世界全体で半減させることが望まれる。そのためには2020年から毎年7.6%ずつ温室効果ガスの排出を削減する必要があるが、現在のまま排出が続いた場合、4年後の2025年から毎年前年比で15.4%の削減が必須となり、現実的に不可能と言われている。つまり、私たちに残された時間はあと4年ほどしかないということになる。(※2)

周知の事実でも驚愕の事実でも、今気候変動が起こってしまっていることには変わりない。それでは私たちには何ができるであろうか、考えてみよう。

※1 引用: 気象庁 「気候変動」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/3-1.html

※2参照: 国連環境計画(UNEP)『Emissions Gap Report 2019 Global progress report on climate action』
https://www.unep.org/interactive/emissions-gap-report/2019/

1 活動家や団体をフォローして情報収集

生物多様性やエネルギー問題、企業のCSR活動など、環境問題や気候変動のイシューにはたくさんの切り口がある。そうしたものを1つ1つ調べていくことにも意味はあるが、できればまとまって知ることができるコンテンツがあると便利ではないだろうか。そこでまず勧めたいのは国際環境NGO 「WWF ジャパン」のサイトやSNSである。(※3) 同団体は特にYouTubeなどで発信を行なっている。専門的・科学的検知に基づきつつ、映像や画像などを用いたコンテンツが豊富で分かりやすく、楽しみながら気候変動を学ぶことができる。

他にも、古着を扱うDEPT Company代表のeriさん、モデルで気候アクティビストの小野りりあんさんの2人が行う平和的プロテスト「Peaceful climate stirke」もおすすめだ。(※4)2021年4月22日に米国主導で開催された温室効果ガスの主要排出国との気候変動サミット、9月に大詰めとなった日本の重要なエネルギー政策、そして11月に開催されたCOP26など、さまざまな気候に関するイベントがあるなかで立ち上がったこのプロテスト。オンライン配信や再生可能エネルギーへの切り替えを促す「共鳴のパワーシフト」や、配信などで得た知識をもとにパブリックコメントを送るアクションなどが展開されている。9月にはモデル・俳優の水原希子さんと共にエネルギー問題に関して基礎編・アクション編の2本立てで配信している。

www.youtube.com

2 映像作品を観てみる

筆者も気候変動については今年から、より能動的に学び始めたのだが、その際にとても役立ったと感じているのが映像作品である。

例えば、『The True Cost』(2015)はバングラディッシュで起こったラナ・プラザ崩落事件をきっかけに、ファストファッションがどのような場所・環境でどのような人に作られているのか、そして着なくなった服のその後を映したドキュメンタリーだ。ファストファッションが環境問題だけでなく人権問題にも深く関連していることが分かる。

また、『Cowspiracy:サステナビリティ(持続可能性)の秘密』(2014)は工業畜産の惨状や気候変動との関連性などについて知ることができるNetflixのドキュメンタリーだ。同じシリーズの『Seaspiracy:偽りのサステイナブル漁業』(2021)では漁業や気候変動がもたらす海洋生物への影響などについて語られている。

3 マイ〇〇に切り替える

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昨今環境に配慮したリサイクルPETやバイオマスレジ袋などが登場しているが、消費しないという面ではやはりマイボトルやマイバッグを持つ方が良い選択だろう。マイボトルに関しては、カフェなどではカップ割引を実施しているところも多く、2021年11月現在、例えばスターバックスではマイボトルを持ってきた人は20円引き、上島珈琲店は50円引きになる。

マイバッグも消費していては意味がない。あるものをできるだけ長く使うことが大切だ。ちなみに筆者は折り畳んでコンパクトに持ち運べる「BAGGU」を使用している。

ただ、マイ〇〇を持つことのみでは気候変動対策にはならないことは忠告しておきたい。その理由については後に述べる。

4 検索エンジンを切り替えてみる

あまり知られていないが、検索エンジンの変更も気候変動や環境問題へのアクションの1つになる。代表的なのが、「Ecosia」(※5)だ。エコシアは木を植える検索エンジンと言われており、検索することによって発生する広告収入の80%を、植樹プロジェクトに寄付している。Googleの拡張機能から設定可能でGoogleと遜色なく利用できるのでおすすめしたい。

5 書籍でもっと!気候変動を深く考える

だんだんと気候変動について興味が出てきたら、書籍で学んでみるのもおすすめだ。筆者のおすすめは次の2冊。1冊目はビル・ゲイツ著『地球の未来のため僕が決断したこと』(早川書房)。マイクロソフト共同創業者であるビル・ゲイツさんは最近では英政府と連携してグリーン技術に投資を行うなど積極姿勢を見せており、著書では気候変動との重要な向き合い方である適応と緩和について述べている。

2冊目は、斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』(集英社)だ。大阪市立大学大学院准教授で経済思想史研究者の斎藤幸平さんは著書で「脱成長コミュニズム」を提唱している。晩年のカール・マルクスに見る思想が経済活動によって起きている環境危機を阻止するヒントになるかもしれない。これまでに30万部のベストセラーとなっている。

6 オンラインディスカッション、ウェビナーに参加してみる

学生を中心にしてアクションや発信を行う団体「Fridays For Future」(※6)はオンラインでのイベントも開催している。日本支部メンバーから学び、一緒に考えて解決策を出すディスカッションもあれば、最近ではプロダクトデザインやスペキュラティブデザイン分野に携わるデザイナーを招き、2050年の未来を考えるウェビナープログラムなどの取り組みも行なっていた。

7 SNSでシェアしてみる

ここまで紹介したものをひと通り行ってきたら、もしくはこれまで紹介したものと並行して行うと良いのがSNSでの発信や情報シェアである。情報を拡散することでより実行数を増やす、それはどのムーブメントにおいても重要なことであり、インターネット以前はクチコミやオフラインのコミュニケーションで行われてきた。しかし今はインターネットがある。数回のタップで消費を抑えることができるのだとしたら、自身が作った気候変動や環境に関するコンテンツがドミノの1個目になるとしたら、シェアしない手はないだろう。

8 本当に必要?消費を考える

3つ目の項目でも述べたが、大量生産・大量消費社会において大きな力を持つアクションはそもそも消費をしないことである。今買おうと考えているものは代替できないだろうか?我慢はできない?本当に必要か?購入が必要だったとして、なるべく環境負荷の少ないものに代用はできないかなども合わせて考えて欲しい。

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ここまですでにたくさんのアクションを提示してきた。しかし、勘の鋭い方や実情を知っている方なら気づいているかもしれないが、残念ながらこれまでの行動のみで気候変動を止めることはできない。政府や企業の行動なしに、気候変動は止めることはできないのである。

例えば、公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)やみずほ銀行、三菱UFJ銀行などが、温室効果ガスの排出量が大きい石炭火力発電へ巨額投資を行なっていることは度々批判されている。特にそのことが話題になったのは、ベトナムの石炭火力発電所「ブンアン2」の新規設立に投資をしていたことが明らかになったときである。「パリ協定」との整合性などを根拠に各国が段階的な石炭火力発電の廃止を進める中でのこうした動きを受けて、日本国内の若者有志9人は投融資に関係する5社に公開質問状を提出した。また、日本と同じ投資国である韓国や現地ベトナムの若者も連帯している。このように私たちも消費者や市民として、企業や社会へのアクションをしていく必要が出てくるのである。そこで次のようなアクションを提案する。

9 企業ダイベストメント

ダイベストメントを簡単に説明すると、地球温暖化に悪影響を与える石油・石炭・ガスなどの化石燃料を供給、またはそれらに依存する企業に投資することをやめたり、銀行口座から資金を引き揚げることをいう。最近ではCO2を出さないグリーン電力や再エネ電力である「しろくま電力」や「みんな電気」などに注目が集まるなかで電力会社を変更したり、石炭火力への投資を行う銀行から離脱する動きは少しずつ起こり始めている。

10 アウトプット 気候アクションへの参加やイベントで対話してみる。

知識や行動に移したあなたはきっと、次のステップに進んだり、より深い知識や経験に触れたくなったりしているのではないか。そこでおすすめしたいのはPeatixや Facebookのイベントページなどを用いてイベントに参加してみることである。先ほど紹介した「Fridays For Future」はZoomなどで対話型のイベントや平和、ジェンダー平等などと気候変動を結びつける分野横断型のウェビナーを開催している。他にも、「国際環境NGO350.org Japan」(※7)なども同じように気候変動やエネルギーに関するウェビナーなどを行っていたり、自治体への陳情なども実践的に行っている。

こうしたイベントから得られる情報はきっと、あなただけではなくあなたの周りやSNSの中の誰かにとっても有益である。知りたくても知れなかった、対話したくても周囲に話せる仲間がいない。アウトプットはそうした人にとっての助けになり、より多くの人が気候変動やそれに関連することについてシェアすることで世論形成がなされていく。それが日本企業にとってはニーズとして反映され、政治の場や日本の政策にも結びついていくと考えると、あなたのイベントレポートや情報共有の可能性に少し期待できないだろうか。

※3 参照: 国際環境NGO WWF
https://www.wwf.or.jp/

※4 参照: Peaceful climate strike
https://p-c-s.tokyo/

※5 参照: Ecosia
https://www.ecosia.org/

※6 参照: Fridays For Future  Japan
https://fridaysforfuture.jp

※7 参照: 国際環境NGO350.org Japan
https://world.350.org/ja/

順番はない。アクションしながら仲間を増やそう。

2021年10月31日から11月12日までイギリス・グラスゴーで行われたCOP26での議論にもあったように、地球には時間がない。有限な時間の中で確実にCO2排出を抑えたり、石炭火力の類から再生可能エネルギーを抑える必要がある。だが、日本における気候変動の危機意識というのは残念ながら簡単な「エコ」に留まることが少なくない。そうしたアクションだけでなく、より実践的な学びや対話、そしてそういった危機意識の共有からこの問題は進んでいくだろう。1人では難しいことではあるが、気候変動や環境の問題に関心を持つ人との関わりから可能性は生まれていく。ぜひ、今回紹介したものを実践し、シェアしていただきたい。

 

文:宮木 快
編集:白鳥菜都