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「地方副業」のメリット。 地方企業も自分も魅力的になれる理由とは

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「あなたは副業をしたいと思っていますか?」
と聞かれたら、「はい」と答える方が多いのではないだろうか。

総務省が実施する「就業構造基本調査」において2017年に副業したいと回答した人の数は385万人にのぼった。
 

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出典:厚生労働省労働基準局提出資料 P1
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361727.pdf

グラフを見ると右肩上がりになっていることがわかる。そういえば、これまで副業解禁に腰が重いと思われていた大企業などの「副業を解禁しました!」というニュースを目にすることも多くなってきた。

主にソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社は2012年から、インターネット関連のサービスを提供する株式会社ディー・エヌ・エーは2017年に副業を解禁。そのほかにもウェブポータル「Yahoo!Japan」やLINEを運営するZホールディングスやなども副業を認めている。
これまではインターネットやIT系の業界において副業が認められている企業が多い印象があったが、最近はメーカーなども副業解禁に乗り出している。
2020年以降、化粧品メーカーであるライオン、製造系メーカーであるヤマハ発動機、金融系企業のSMBC日興證券も副業を認めているのだ。

このように企業の制度の後押しもあり、副業へのニーズは高まっている。
そしてこれに勝機を見出し、副業での人材を募集し始めたのが、地方企業だ。

都心から完全リモートで働く「地方副業」

地方における人口減少に伴って、地方における働き手の枯渇が問題になっている。
三大都市を除く地方圏から都市圏への人口の流出が止まらない。

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出典:総務省 人口減少社会の課題と将来推計
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc141110.html

その背景として賃金や経営の安定性、やりがい等が不足していることから、若者が良質な雇用を求めて三大都市圏に流出していることがあげられる。地方都市にとっては、良質な雇用を生み出し、大都市からのIターン・Uターンを図ることが解決への糸口となってきた。

そんななかで訪れたリモートワーク定着と副業推進の流れ。この流れを逃すまいと、地方企業は都市圏に住みながら、地方都市の仕事をリモートワークで請け負ってもらう「地方副業」を募集し始めた。

地方企業にとって、移住というハードルなしに、都市圏でスキルを磨いた人材の労働力を確保できるのは大きなメリットだ。地方の過疎化を直接解決することはできないが、地方都市の生産活動を増加させることに寄与し、長期的な目線で鑑みると都市圏への人口流出を止める鍵になる可能性もある。

そして、仕事を請け負う人材にとっては、都市圏に住みながら地方都市と関われること、また本業で得たスキルを活かして仕事の幅を広げたり、さらに実績を積みスキルを広げていけるというメリットがある。

地方副業と人材のマッチング!プラットフォームはさまざま。

では、実際にどういった方法で地方副業を探せばいいのだろうか。地方副業に特化したプラットフォームは多数存在している。

例えば、「Skill Shift」は

転職もなく、移住もなくできる新しい関わり方を提案します。地方企業は業務改善やイノベーションを目的に。都市部の正社員は本業にムリの出ない範囲の副業(+やっぱりちょっと収入も)。そんな「副業正社員」という新しいカタチを提案します。(※1)

と謳い、地方企業の求人を掲載している。


「Loino」は

・都市部人材と各地域とのマッチングにフォーカス
・中長期の副業案件に向き合う
・リモート・準委任契約の案件に特化(※2)

を特徴としたプラットフォームとして運営されている。

ほかにも「ふるさと兼業」「JOINS」など、さまざまなプラットフォームが地方に特化して副業の求人を掲載している。

実際に掲載されている求人にはマーケティング・ブランディングの戦略立案から、ECサイトの立ち上げやDXなどのデジタルリテラシーを必要とするもの、製造ラインの構築などさまざまだ。

求人ページを眺めていると、地方企業でどういった人材が不足しているのかが明らかになって大変興味深い。同時に、そうしたスキルをもった人材を副業という形であれ獲得できれば、新たな視点や知識を取り入れることができて、非常に有意義なのだろうと想像できる。

※1 引用元:Skill Shift ホームページ
https://www.skill-shift.com/
※2 参照元:Loin ホームページ
https://loino-p.jp/

地方と関わり続ける。お互いにとって魅力的な関係性。

筆者の出身は広島県だ。自身も上京して働いている一員として、去った故郷への愛着や貢献したい気持ちと、東京での生活をやめられない気持ちの狭間でえも言われぬ感情を抱くことがある。そんな感情に寄り添ってくれるのが、地方との関わり・東京での生活をどちらも手に入れられる働き方ではないだろうか。

副業ではなく「プロボノ(自らの知識経験を活かしたボランティア)」として実際に東北の地方企業を支援した経験を持つ方に話を伺った。地域と関わっている実感以上に得られるメリットがあるようだ。以下、インタビューを掲載する。

地方企業とどのような関わり方をしていますか?

「プロボノ」という形で、起業家さんたちからの相談を受けてアドバイスをしたり、アイデア出しをしたりと、仲間の一員のような形で活動しています。他のメンバーと共に、それぞれ「自分のやりたいこと・好きなこと」、「自分の得意なこと」、そして「地域で必要とされていること(課題、ニーズ)」の円が重なり合ったところから仕事を形にしていきました。

地方企業と仕事をしようと思った理由はなんですか?

もともと東北は大好きでよく旅行などにも行っていましたが、3年間赴任したことで多くの素敵な方々と出会い、思い入れがさらに強くなりました。その後東京に異動となりましたが、東北の方々と継続的なつながりを持ちたいと感じたのでプロボノのプロジェクトに参画しました。地域と接点を持っていることがわたしのライフワークであり、普段の生活に張り合いを与えてくれる心の拠り所になっています。

ご自身や地方企業の方にとってどのようなメリットがありましたか?

ある時物販のディスプレイ方法についてアドバイスしたら「さっそく売れました!」と連絡をいただいたことがあります。自分にとっては大したことではなくても喜んでいただけるととても嬉しいですね。地域の方が持っているものと、私たちが持っているものをうまく補完しあえることはお互いにとってメリットがあると感じます。
眼前に迫る社会課題に真っ向から向き合うことの多い地域の事業では、経営判断がいつも傍らにあります。その点がとても刺激的です。地域と関わり様々なビジネスに触れることで、会社員としての日々の仕事にも新たな視点で取り組むきっかけとなるなど良い影響を与えてくれると思います。

双方にとってメリットを見出せる機会ですね。印象的な言葉などはありますか?

私たちがお世話になっている起業家さんは「移住までいかなくても、プロボノメンバーのように、いわゆる”関係人口(※3)”よりも一段上がった継続的に関わり続けてくれる人や影響力を持つ人を増やしていきたい」とよく話してくださいます。「地元にいる人たちだけでは気づかない視点でとても勉強になる」と言ってもらえることもとても多いです。

ご自身の経験をもとに、伝えたいことがあれば教えてください。

「この人・この地域に関わっていきたい」という思いがすべての原動力になるので、その気持ちと好奇心を大切に自分なりの関わり方を考えてみるのもよいのではないでしょうか。私たちが地域とコミュニケーションをとることで、それが地域のよりよい活動につながっていたらこの上なく幸せです。

 

今回インタビューをした方は、報酬の授受はないものの、副業と同じような活動をしていた。
働き手にとっては経験やスキルを得ながら地方と関わることができ、地方企業は移住のハードルを超えて人材を確保できる、という仕組みは双方にとってメリットが大きい。
「地方副業」という新たな働き方をパラレルキャリアの選択肢の一つに加えてみてはいかがだろうか。

※3 関係人口:移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと。

 


文:藤木美沙
編集:おのれい