リクルートグループが2021年4月から週休「約3日」を導入した(※)。
いよいよ、週休3日制が私たちのすぐそばに!
そう思ってワクワクしたのは私だけではないはず。
2021年1月に政府内で週休3日制の導入推進について議論されるというニュースが報道されてから、週休3日制について耳にすることが多くなった。企業側には生産性の向上、人材の確保という点が、働き手側には子育てや介護との両立というメリットがあり、推奨が検討されている。一方で賃金や、他の社員とのコミュニケーション機会の減少などの懸念点においては議論が必要であり、一般化されるまではまだ時間がかかるだろう。
週休3日制の導入によって目指されるのは、各々にあった働き方の実現だ。
子育てや介護が必要な人にとってはもちろん、働きながら勉強したり、副業の時間に充ててパラレルなキャリアを歩むこともできる。もちろん、趣味に没頭したっていい。
※参考:リクルートグループ、週休「約3日」に。4月から年間休日を145日に増加へ(https://www.businessinsider.jp/post-231540)
働き方改革の変遷をたどる
日本の働き方改革は、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されて以来始まった。少子高齢化による生産年齢人口(※)の減少、育児や介護との両立など、働き手の環境変化により生産性の向上や就業規則の柔軟性が問題になる中、働き方改革はそれを解決するために
働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
出典:厚生労働省 働き方改革の実現に向けて (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html)
とある。
長時間労働是正の取り組みや、働く時間をフレキシブルにする取り組みなどさまざまだが、身近なところでは年5日の有給休暇の取得の義務化があげられる。
期限が迫っているので有給をとって!と会社から急かされた経験をした人も多いのではないだろうか。
私たちの働く環境は少しずつ変化している。ここで、少し世界に目を向けてみよう。
「各々にあった働き方」を実現するために、海外の企業はどのような取り組みを行っているのだろうか。
※生産年齢人口:生産活動の中心を担う15歳〜64歳の人口
参照:総務省 平成29年版情報通信白書(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html)
海外企業はどう?休暇制度のアレコレ
Netflix Inc.:無制限休暇制度
動画配信のプラットフォームを提供するNetflix Inc.。人事制度についての本が出版されているのでご存じの方も多いかもしれないが、Netflixは休暇日数の上限がない「無制限休暇制度」を導入している。
あるインタビューによると、最高経営責任者(CEO)のリード・ヘイスティングス氏は「今日の情報化社会において重要なのは、何時間作業するか、ではなく、何を達成するかだ」と述べている。
いくらでも休めと言われても休みづらいのが現実だ。しかし、役員や上司に当たる役職の人が積極的に休むことで社員の休暇取得を推奨したという。
ヘイステイングス氏は、イノベーションは休暇から戻った社員によってもたらされることが多いとも述べている。休暇を取り、仕事以外の刺激に触れ物事を多面的に捉えることで、日常の思考にもクリエイティブな側面が現れてくるのだ。
参照:なぜNetflixの「無期限休暇制度」は成功したのか これからの時代に必要な”心の知能”とは (https://realsound.jp/tech/2020/09/post-626577.html)
salesforce.com Co.,Ltd.:ボランティア休暇
仕事以外の経験をするための休暇制度もある。
クラウドサービスを取り扱うsalesforce.com Co.,Ltd.では、年間7日間の有給ボランティア休暇を与えられる。各々関心のあるボランティアに参加し、それを社内で紹介することもあるという。
社会貢献活動を通して会社の外での出来事やその出来事を解決しようとする人を知り、それを会社に持ち帰って何ができるか考えることで、業務において社会貢献活動をうむことにもつながるだろう。
参照:salesforce.com Co.,Ltd. ホームページ (https://www.salesforce.com/jp/company/careers/unparalleled-rewards/)
Epic Systems Corporation:1ヶ月の有給と旅行補助制度
電子医療記録ソフトウェアアプリケーションを提供するEpic Systems Corporationでは、5年ごとに1ヶ月の有給休暇がある。一度も訪れたことがない国に行く場合は、その渡航費を会社が負担してくれる。「Have fun, do good, live well」とホームページに記載があるとおり、新しい世界を見て視野を広げることを推奨する制度だ。社員の体験記を読むと、新婚旅行から、現地でのボランティアに参加した経験などさまざまだ。
参照:Epic CAREERS (https://careers.epic.com/Sabbatablog)
Costco Wholesale Corporation:祝日は休業
また、少し性質が異なるが、スーパーのCostcoでは、クリスマスなどの祝日を家族と過ごせるように休業する店舗がある。国によって異なる様だが、アメリカではクリスマスや元旦を含んで年に7日も休業日がある。
日本のスーパーでは元旦以外休業しているところはあまり見かけないが、大切な祝日を家族と過ごせる体験はとても良いものになると感じる。
参照:Costco Wholesale Corporation ホームページ (https://customerservice.costco.com/app/answers/detail/a_id/701/~/what-are-costcos-holiday-closures%3F)
全ては働き方を「選択」できるようになるために
ビッグローブ株式会社にもファミリーフレンドリー休暇という制度がある。年間5日間を疾病治療、予防、子どもの看護・学校行事、ボランティアなどに使用することができる。有給とは別で制度を用意することで、子どもの行事などのイベントの際に休みを取りやすくなるのではないだろうか。
ここまで紹介してきたどの休暇制度も社会にとって、会社にとって、社員にとって良い影響を与えるものになっている。海外企業のユニークな事例は、休暇をとることで人生における経験の幅を広げたり、オリジナルなライフスタイルを各々が築いていくことのできるものだ。
働くことをどう捉えているか・どういう文化の中で就業の制度やスタイルが築きあげられてきたかは、国によって異なる。高度経済成長期を終えた日本では、都市一極集中や少子高齢化という問題を抱える中、新しい働き方への変化を余儀なくされている。
国の制度・会社独自の制度が整備されることによって一番求められるのは、働き方を自分で「選択」できるようになることだ。
ライフスタイルや価値観の多様性が増していく今、各々が自分にとってフィットする「働き方」を見つけられるように社会は変化している。働く時間も余暇の時間もより良いものになるだろう。前途洋洋たる未来が待っているように思う。
取材・文:藤木美沙
編集:柴崎真直